雨鐘の空、落ちる時



■ スクリーンショット






■ 内容

 フリーのカメラマン――桐島壮太は雨鐘村なる寒村に迷い込む。
 そこでは《九頭竜さま》が信仰されており、近々《竜鎮祭》が行われるという――。



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 作者のおうがさんは、雨鐘の空の制作指針の一文で、このように書いています。


 伝奇やホラーを題材にした昨今のヴィジュアルノベルはアクションを重視した物をよく目にしますが、この「雨鐘の空、落ちるとき」はゴシックホラーに近い話になっています。


 ──と。
 現在の伝奇ものの主流はアクションメインのエンターテイメントだと思います。
 特殊能力に目覚めた主人公達が、その力を使ってバトルを繰り返すタイプの作品です。
 ライトノベルなどで主流となったエンターテイメント的なアプローチなのですが、伝奇要素は記号に近く、その分怖さが失われている現状があります。

 ですが、「雨鐘の空、落ちるとき」は従来の意味での伝奇──つまり、ホラーに軸をおいた作品を目指して制作されているようです。

 「九頭竜」をまつる「竜鎮祭」。
 石碑に刻まれた不思議な印──。
 謎のトレンチコートの男。
 意味深なタイトル……。

 さりげに過ぎる生活の中に少しずつ入り込む伝奇要素が将来的な崩壊を予感させ、じわりじわりとプレイヤーの心をむしばんでいきます。

 祭りの当日には、どんなカタストロフィが起きるのか──。
 散らばる伏線がどのように結ばれるのか。

 期待したくなるじゃありませんか!

 いや、期待どおりでした……。
 メインルートのエンディングはじーんと……。




■ お気に入りのシーン

 私がうおおおおおおとなった箇所の抜き出しを。
 とりあえず、スクリーンショットをご覧ください。



 もう何て言うか、ものの見事にクトゥルー神話伝奇してます。
 ここまで真っ直ぐなのも珍しい直球です。
 クトゥルー脳全開の私にとっては、これらの呪文を唱える一連のシーンだけでダウンロード購入した価値はあると思ったくらいでした(笑)




■ 攻略

 以下は、簡単な攻略を。
 購入者で、かつ、攻略が必要な方だけ反転してご覧ください。

 ルートは3パターン。
 それぞれサブ、メイン、アナザーのようです。

 サブ → メイン の順で攻略するのをお勧めします。
 なお、アナザーはメイン終了後にしか出てこないようです。

 《サブ》
 ・上月成将の家で過ごす
 ・酒運びを手伝う

 《メイン》
 ・上月成将の家で過ごす
 ・水車の修繕に行く


 《アナザー》
 ・メイン終了後、最初から開始
 ・トレンチコートの男を捜す
 ・ちょっと用事が……


 おそらく、これで全ルートいけると思います。




■ 総評

 『クトゥルフ神話TRPG』や『邪神伝説』シリーズ(の序盤)のような、しっかりとしたクトゥルー神話伝奇ホラーを愛好する方には心からお勧めです。
 ラヴクラフトをベースにダーレス要素を混ぜたという感じの、凄く地に足の着いたクトゥルー神話作品だと思います。(あ……。念のために行っておきますが、私はインフレがすさまじい『斬魔大聖デモンベイン』とか『ニライカナイ』とか『終末少女幻想アリマチック』とかも大好きですよ。それらとは別に、『雨鐘の空、落ちるとき』のようなストレートなクトゥルー神話系伝奇ホラー作品も大好きなのです)



 雨鐘の空、落ちる時 Digiket




■ 『雨鐘の空、落ちるとき』と『鳥鳴きの森』の関連性

 『雨鐘の空、落ちるとき』には、『鳥鳴きの森』で登場したキャラの一部が再登場しています。(別サークルの作品ですが、シナリオ担当が同じ)
 いわば、『邪神伝説』における渚とケインのケイオスシーカーコンビのように、各地で発生する神話事件を調査、解決しているようです。


 『鳥鳴きの森』からプレイしてほしいと思います。(両方足しても1200円くらい――ハードカバー1冊分ですし。それで数時間遊べるクトゥルー神話ものがプレイできるのですから!)


 しかも、引きを見る限り、まだまだこのシリーズは続くようです。
 これは、追いかけざるをえません……!




■ 注意!

 すべてのルートをたどっても、現在のバージョン(2009年1月10日現在))では「追憶」の28番目が〔NO IMAGE〕となり、埋まらないようです。
 なお、この不具合については報告しております。後日パッチで対応するとのことです。

 この部分については、作者のおうがさんより、早速パッチで対応されたとの報告をいただきました。
 素早い対応、ありがとうございました!