忌譚
二人のヒロイン――麟と八重を絡めた恋愛と、対クトゥルフ神話クリーチャーのバトルで物語が進む伝奇系ビジュアルノベルです。
■ スクリーンショット
それぞれ第一幕、第二幕、終幕のタイトル画面です。第一幕と第二幕以降の絵師さんが変わっており、イラストのタッチが異なります。
■ 序盤
両親の死を受け、叔父の住む仙台市東北部、緋坂市に移り住むことに決めた主人公――淡島朔也は、引越しの車を見送った矢先に、叔父の死を知らされる。
棺の中にあったのは、苦悶の表情を浮かべている叔父の死体。半ばミイラ化したそれは、変死としかいえないすさまじいものだった。
朔也は叔父の家で淡島家の家事全般を取り仕切っていたメイドの麟、そしてクラスメイトであり陀厳神社の宮司を務める八重と協力し、巻き込まれる事件を解決していく――。
■ クトゥルー神話伝奇
主人公を襲う事件やクリーチャーのことごとくがクトゥルー神話系のものです。
これだけで、クトゥルフ神話マニアとしては大狂喜なのですが、ライターの佐山操さんの伝奇・民族の造詣が物凄ぉぉぉぉぉく深く、クトゥルー神話との絡め方が実に上手なのです。……と思ってHPを拝見したら、さまざまな場所で活躍されてる物書きのプロでした……。
以下作中にあるクトゥルー神話がらみの描写をいくつか――。
朔也はくるっと紙を裏返してメモ面を見た。
『鬼丕老海 倶津瑠 星の火祭り 陀厳教団』
どうやら海童(ハイトン)とは不夜城と呼ばれる場所に封じられており、星辰――つまり、星が正しい位置に来た時、不夜城の門が開かれ、海童(ハイトン)は地上に舞い戻るということらしかった。
蝙蝠の翼を背に生やした海老かザリガニのような甲殻類。四本の細長い脚で身体を支え、鋭い切っ先を持ったザリガニのような巨大なハサミの手を備えている。だが、その頭部は……。蛍光ピンク色の光をぼんやりと放つ、人間の脳みそのようなものがそこにあるだけだった。
ミ=ゴが出てくるクトゥルー神話ゲームはレアですよね……。
他にも、ティンダロスの猟犬や蛇人間、フライング・ポリプなど、マイナーなクトゥルークリーチャーも満載です。
もちろん、大物達も登場しますのでご安心ください!
あと、具体的に例示を挙げるとネタバレになるので言えませんが、△△△△が実は××××だったというのは驚きました。最初から読み返すと、伏線めいたイベントをこなしているんですよね……。
■ 音楽
作品を盛り上げる音楽も実に素晴らしいものばかりでした。
『優しきひと』『魔犬』『這い寄る混沌』あたりが好きですね……。
というか、この曲名でどんな神話生物が登場するかがわか……ぁぅぁぅ。
音楽担当の秀庵さんのHPはこちら。
『這いよる混沌』などの曲が聞けますので、是非。
■ 攻略
以下、第三弾『忌譚〜終幕:槐安の夢 昧爽の光〜』の攻略です。
購入した方で、かつ、攻略が必要な方のみ反転してご覧くださいませ。
確認したのは以下の六つです。
(確認し忘れもあるかも知れませんので、ご注意くださいませ)-------------------------------------
【1】 バッドエンド(?)
八重
麟
緋坂市
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【2】 ラヴェルエンド(?)
宗高
宗高
緋坂市
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【3】 八重エンドA(?)
八重
八重
八重
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【4】 八重エンドB(?)
八重
八重
緋坂市
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【5】 麟エンドA(?)
麟
麟
麟
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【6】 麟エンドB(?)
麟
麟
緋坂市
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■ 総評
『忌譚』はクトゥルフ神話要素テンコ盛りの作品でした。体験版をプレイされるとわかるでしょうが、最初の敵が“クスクスと笑い声が聞こえる見えない存在”なんて作品――他にありません。
日本神話とクトゥルー神話の見事な絡め方。豊富な民俗・オカルト・伝奇知識に、的確な文章――。合計九章(序章+八章)とボリュームもあいまって、じっくりと直球のクトゥルー神話伝奇を楽しもうという方におススメです。(ケイオスシーカーや、『タイタスクロウの事件簿』がお好きな方は是非!)
忌譚〜第一幕:絶望の境 深淵の空〜 DLsite
忌譚〜第2幕:空蝉の光 枚銜の闇〜 DLsite
忌譚〜終幕:槐安の夢 昧爽の光〜 DLsite