クトゥルー神話解説書のリスト
沢山あるクトゥルフ神話の解説書をまとめ、考察と紹介を足してみました。
段をずらして、( )内で説明しているのは、タイトルが少し変わっただけで内容がほぼ一緒の商品です。購入時は注意してください。
■ リスト
2011 ヴィジュアル版 クトゥルー神話FILE*1 入門向け
2011 ビジュアルで楽しむ「クトゥルフ神話」*2 入門向け
(2008 「クトゥルフ神話」がよくわかる本 入門向け)
2010 本当に恐ろしいクトゥルフ神話 *4 入門向け
(2009 恐怖と狂気のクトゥルフ神話) *5
2009 萌え萌えクトゥルー神話事典 *6 入門向け
2008 クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム *7
2007 クトゥルー神話事典 第三版 *8
(2001 クトゥルー神話事典 第二版)
(1995 クトゥルー神話事典 )
2007 クトゥルー神話ダークナビゲーション *9
2007 クトゥルー神話の本
2007 エンサイクロペディア・クトゥルフ *10
2006 クトゥルー神話の謎と真実 *11 入門向け
2005 図解 クトゥルフ神話 *12 入門向け
2004 クトゥルフ神話ガイドブック
2004 クトゥルフ神話TRPG *13
1994 クトゥルフ神話図説 *15
(1989 クトゥルフモンスターガイド〈2〉)
(1989 クトゥルフモンスターガイド) *16
1994 別冊幻想文学 ラヴクラフト・シンドローム
1993 クトゥルフ・ハンドブック 改訂新版
1988 クトゥルフ・ハンドブック
1987 別冊幻想文学 クトゥルー倶楽部
1986 クトゥルフの呼び声(BOX版)
■ 年表からの分析
ご覧いただけるように、ある程度期間を開けて、突然複数冊出る箇所が二箇所あります。
1988から1993までの断絶と1995から2004までの断絶です。*17
空白期にあまり出版されなかったのは「ニーズがないから」であり、突然出るようになったのは「解説書が欲しいというニーズが生まれたから」と推測できます。
では、その時代に何があったのでしょう?
まずは、1987年〜1988年。
『別冊幻想文学 クトゥルー倶楽部』(1987)や『クトゥルフ・ハンドブック』(1988)と言った国内初のクトゥルー神話解説本が出るきっかけになったのはなんでしょうか。もちろん『クトゥルフの呼び声』(1986)です。『クトゥルフの呼び声』は現在でも遊びつくされているTRPGの名作であり、クトゥルー神話存在の設定やSAN値など、日本のクトゥルー神話創作やパロディにに大きな影響を与え続けている素晴らしい作品です。
次に1993年。
実は1992年に『Alone in the Dark』という世界初の3Dゲームが発売されました。そこで使われているモンスターが実はクトゥルー神話存在! おそらくそれで一般の人達がクトゥルーとは何かを調べたのでしょう。1994年には『ラヴクラフト・シンドローム』『クトゥルー神話大全』『クトゥルー神話図説』と3冊の解説本が出ています。(『クトゥルー神話図説』は『クトゥルフモンスターガイド』の1と2を合わせた内容なので、厳密に言えば微妙なのですが……)
また1995年に『クトゥルー神話事典』が発売されました。
それから時期が空いて2004年以降。
『クトゥルフ神話ガイドブック』(2004)、『図解クトゥルフ神話』(2005)、『クトゥルー神話の謎と真実』(2006)、『クトゥルー神話の本』(2007)、『エンサイクロペディア・クトゥルフ』(2007)、『クトゥルー神話ダークナビゲーション』(2007)と解説書が大量に出版されます。
このきっかけとなったのが18禁ゲーム『斬魔大聖デモンベイン』(2003)のヒットだと思われます。このあと、ニコニコ動画におけるクトゥルフネタの盛況(クトゥルカ、MMDのクトゥルフ様やニャル様、SAN値直葬タグなど)や、『這いよれ! ニャル子さん』(2009)のヒットがあり、現在に続いております。
解説本が同時期に複数発売されるのは、ニーズが市場に生まれたからだと思います。
その理由を紐解けば、クトゥルー神話史のターニングポイントが見えてきます。
ようするに! 『クトゥルフの呼び声』『Alone in The Dark』『斬魔大聖デモンベイン』の三つは日本のクトゥルー神話史において大きかったなあ……と。
……あ、まとめてから気付きましたが、種類は違うけれど、これ全部『ゲーム』なんですね。ホント遊びは偉大です。
■ 初心者向けのオススメは?
クトゥルフ神話ビギナーさんが最初の一冊を選ぶなら、一番お薦めなのが、『ビジュアルで楽しむ「クトゥルフ神話」』!
大きくてカッコいいイラストに、まとめられた項目。『図解クトゥルフ神話』『萌え萌えクトゥルフ事典』を手がけられたクトゥルー神話研究家の森瀬繚さんが監修をつとめているため内容も堅実!
解説書はほとんどコンプリートしてますが、初心者向けという点ではコストパフォーマンスを含めてダントツ。迷ったらまずこれをお勧めします。
次点で『ヴィジュアル版 クトゥルー神話FILE』を!
クトゥルフ神話業界で大活躍されているnottsuoさんのイラストが大量につかわれていて、それだけでも素晴らしいのですが、ほんの少し、コストを押さえただろう点が見えてしまうのが気にかかります。でも、この価格でこの内容は素晴らしい!
『クトゥルー神話の謎と真実』もオススメ。
項目が整理されていて多くなく、しかもイラストが格好良い!
問題は絶版で、入手が困難なこと。
スタンダードな知識を得るには『図解クトゥルフ神話 』がオススメ。
内容は素晴らしいです! もうそれは文句なく。伊達にクトゥルー神話研究家の森瀬繚さんが書いたわけじゃないのですよ! ですが、残念なことにイラストに少し迫力がありません。他作品を読みながら知識を習得するように使うのがいいとおもいます。
また『萌え萌えクトゥルー神話事典』も表紙に反して実は凄くしっかりしたコンテンツです。ですが、初心者向け……となると正直、少し薦めづらいです。やっぱり最初の第一歩は、ちゃんとしたイラストで神話存在を覚えてほしいなあ、と(笑)
あ、でも、「ちゃんとした画像はネットでググりながら覚える」とかでしたら全然大丈夫ですよ!
なお、とっかかりの解説書は一冊で充分だと思います。
■ マニアになりかけな人には?
どんな趣味でもそうですが、はまりだすと色々と集めてしまいますよね!
全部手にいれればいい話なのですが、読む時間も買うお金も限度があります。
今回、案内させていただくのは、より深みにハマる方々にオススメな本。以下の4冊を押さえておけば、大体はどこに出しても大丈夫な知識を押さえられると思います。
まず挙げるのは翻訳もののエンサイクロペディア・クトゥルフ。
膨大な神話存在や魔道書が書かれていて眺めているだけでも楽しいですし、まだ翻訳されていない神々などを知識として習得できます。
次にクトゥルー神話事典 第三版。
クトゥルー神話世界の年表と日本で販売されている神話作家のリストが貴重です。ただし、初心者向けではありません。一度作品を読んだマニアが用語を思い出すために引く辞書のような使い方が有用です。
クトゥルフ神話TRPGも資料的価値が高いです。
ゲームのマニュアルだけあって、説明が丁寧かつ要所を押さえていますし、外なる神々、旧支配者、モンスター、魔道書などの設定は読むだけでも楽しいです。あわせてクトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルムや他のサプリメントがあれば最強……なのですが、高い……。
最後にクトゥルー神話ダークナビゲーション。
映画、音楽、ゲームなどのクトゥルー神話作品が素晴らしいです。より深みにハマるコレクターが作品を集める時に重宝します。
おそらく、この4冊を押さえておけば大丈夫だと思います。*18
では、良きクトゥルー神話ライフを!
追記。
赤虫療養所のRWS管理人さまが“クトゥルフ神話TRPG”のための神話解説書ガイドにて、解説書のランキングを公開されております。お薦めの度合いを五段階で明確に記し、内容が分かりやすいコメント付き。是非、御覧ください。
*1:入門向けのお薦め! 特撮っぽいイラストが楽しい
*2:入門向けで一番のお薦め! 絵が大きくてカッコイイし、しかも凄くまとまっている
*3:上級者向け。リン・カーターによるクトゥルー神話研究の古典。内容は古いが、神話マニアには是非読んで欲しい名著。
*6:萌え萌えで釣っておいて内容が濃い事典。神話好きな人は多数のネタでくすりとできる。
*7:神話好きには是非読んで欲しいTPRGのサプリメント。クトゥルー神話の神々やモンスターの設定集で、眺めているだけで楽しい。挿絵が凄い。
*8:どちらかと言えば上級者向け。
*9:クトゥルー神話好きのためのナビゲーション。クトゥルフが入り込んでいる映画、ゲーム、音楽などのリストが素晴らしい。
*10:翻訳もの。初心者向けではないが、ひと通り知識を得た後に読んで欲しい本。項目が膨大で、それを眺めるだけでも楽しい。
*11:項目がきちんと整理されていて全体像をつかみやすい。なにより絵が格好良い。
*12:バランスが良い事典。もったいないことに絵に迫力がない。
*13:クトゥルフ神話のTPRGのマニュアルは、同時にクトゥルフ神話の解説書でもある。沢山出ているサプリメントも貴重な資料集。なお、『クトゥルフの呼び声(ボックス版)』(1986)が最初に出たものだが、このリストには入手しやすい書籍版を掲載した。
*14:『クトゥルー神話事典』と『クトゥルーの本』のベースとなった。
*15:モンスターガイドの1と2を合わせたもの。
*16:クトゥルフ神話の神々や怪物たちがイラスト共に解説。怪獣図鑑のノリだけれど、面白い。
*17:本当はちょこっと出てたりするけどっ