ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話

 『ゆっくり達のクトゥルフの呼び声TRPG』から始まった「ゆっくり×クトゥルフ」ブーム。
 その中でも極めて高い人気の『ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話』の第一幕が完結しました。(キャンペーンの第一部終了で、まだ続く訳ですが! 第二幕は4月末ごろとのこと)


 霊夢、竜崎、ゴロー、妖夢とそれぞれのキャラが個性的で、しかもキチンとカッコイイ。
 ストーリーが凄く、演出が上手く、何よりイベントの規模、発想が素晴らしい。
 商業を含めた近年のクトゥルフ神話創作の中でもトップクラスに面白い(と本気で思っています)この作品、まだご覧になっていないかは是非どうぞ!


 【ゆっくり実況】ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話Part1【TRPG】
 


 追記。
 動画を製作された方のサイトと連絡先が作者のマイリスに書かれています。つーかニコニコ静画に投稿されているこちらのイラストも上手え……。
 シナリオライターを目指されているようですので、さあ、ライターを探している会社の人は今のうちにこの才能を確保するのです!(きっちりとした報酬で!)
 そして、できればクトゥルフ神話作品を依頼してほしいなあ……と(笑)


 追記の追記。
 本当に商業デビューされてて驚きました! おめでとうございます!
 ですが……。……が……!
 ゆっくり妖夢のコミカライズは正直もにょもにょとしています。はい……。


 クトゥル神話マニアのためのネタバレレビュー


 さてさて。
 簡単な紹介だけではなんですので、クトゥルフ神話系ブログの管理人らしきレビューを。
 以下、他作品のネタバレに言及しているので、白反転します。
 『ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話』の第一幕を見終わって、かつ物凄くクトゥルフ神話作品を読み込んでいる人だけがご覧下さい。


 『ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話』は第一幕の引きとして、ループものに突入しました。
 このラストを見て、近年流行りのループものかよっ、と思われた方、正直名状しがたきクトゥルフ道を極めるための精進が足りません。毎日、「いあいあ くとぅるふふたぐん」百唱を敢行なさいっ!
 ループがチープという意見には大反対。むしろ、日本クトゥルフ神話長編の定番を押さえたシナリオとして素晴らしいと思っています。


 はっきり言ってネタバレになりますが、『イクサー1』『邪神伝説シリーズ』『アリシア・Y』『ニライカナイ『エンジェルフォイゾン』デモンベイン』『3days』『蒼色輪廻』『素晴らしき日々』『ク・リトル・リトル』など、日本のクトゥルフ神話史に名だたる長編作品の多くがループ、あるいは世界再構築ものです。ネタバレによる踏み込んだレビューは少ないので、あまり意識されていませんが、日本のクトゥルフ長編群は、他のジャンルに比べて異様なまでのループシナリオ(時間跳躍による世界改変シナリオ)採用率。


 ※追記。すみません。読み直すと『エンジェルフォイゾン』は世界の再構築だけであり、時間あるいは次元跳躍は一切ありませんでした。


 『デモンベイン』が流行った時、ループラストとか神化なんて斬新でカッコイイ〜、的な感想をいくつか見ましたが……、いやいや、日本ではクトゥルフとループもの(+神化なども)の組み合わせはそもそも定番なんですよー、ニトロプラスのスタッフは過去作品群へのリスペクトが好きなようですから、ループシナリオ構造もそこら(というか具体的にはおそらく美女×ロボット×クトゥルフ×触手×ループものの先輩でもある『イクサー1』へのリスペクト)を踏襲したオマージュなんですよー、と何度も言いたくなったのを覚えています。


 なぜここまで、ループもの(時間跳躍もの)シナリオが採用されるかについてですが、そもそもラヴクラフトには『銀の鍵の門を越えて』という時間跳躍作品があります。また、クトゥルフ邪神群による世界の破滅を人間の力で抵抗するとなると、歴史そのものを変えてしまうという解答が相性いいというのもあります。それに、単純にヨグ様やイス様という存在が時間跳躍シナリオを連想させやすいという側面もあると思っています。そもそもクトゥルフというジャンルは先達の傑作に対するオマージュ要素が強く、日本クトゥルフ史でも初期に来る『イクサー1』や『邪神伝説シリーズ』を意識すると、どうしてもループ系を扱いたくなるという側面もあるでしょう。
  単純に「宇宙」や「次元」や「神話」を語る場合、ループという時間と次元の無限の広がりを扱うと壮大で面白いということもありますが。


 そういう意味では、この『ゆっくり妖夢』も実にしっかりと「日本クトゥルフ神話長編の基本」を踏襲した作品。しかも、邪神に対する恐怖と人間の抵抗というクトゥルフの美味しいところをしっかり押さえた傑作だと感じています。ホント、これをどうまとめるのか、第二幕が楽しみですよね!