ゆるふわ系クトゥルフ神話ショートショート『がんばれ! ダゴン秘密教団日本支部』が電子書籍に!
『リトル・リトル・クトゥルー』に収録された『がんばれ! ダゴン秘密教団日本支部』が電子書籍になって販売されました!
クトゥルーさま復活を目指す団員たちの頑張りが描かれた掌編がトータル48話。
『春・夏編』と『秋・冬編』に別れており、価格はそれぞれ300円……なのですがっ。
現在、前編にあたる『春・夏編』が特別価格、100円でセール中です。
Kindle:がんばれ! ダゴン秘密教団日本支部 春・夏編
Kindle:がんばれ! ダゴン秘密教団日本支部 秋・冬編
(文:寺田旅雨 絵:海野なまこ 協力:ニャルラ党、クトゥルフ出版)
kindleの電子書籍は、android、iOS、windows、Macでそれぞれ読めるアプリをダウンロードできます。(Kindle本体を新たに買う必要はありません)
まずは現在特価中の『春・夏編』から手にとってやってくださいませ。
追記。
なんとっ。
kindleの有料の「読み物」カテゴリで1位になりました!
再追記。
Kindle情報サイト、「きんどるどうでしょう」にインタビューを掲載していただきました。
まさか、こんな依頼が舞い込むとは……。他のインタビュー、有名な方やら商業で活躍されている方もいますのに。
きんどるどうでしょう:【KDP最前線】ゆるふわ系クトゥルフ神話掌編集「がんばれ! ダゴン秘密教団日本支部 春・夏編/秋・冬編」を執筆した寺田旅雨さんにインタビュー
しかもっ。
『がんばれ! ダゴン秘密教団日本支部』を読んでくださった矢野健太郎さんが「水かきの可愛い団員」のリアルバージョンのイラストを!
んでもってつい描いてしまった 水かきの可愛い団員ちゃん ややリアルタイプw pic.twitter.com/xJmJHsShY2
— 矢野健太郎 (@yanoja) 2015, 10月 10
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■ サンプル
以下、サンプルを2篇ばかり。
ご覧のとおり、クトゥルー神話のダゴン秘密教団日本支部が現代にあったら……という、1作1000字以内で書かれたゆるゆるなコメディ作品です。
【01】 がんばれ! ダゴン秘密教団日本支部(春・夏編より)
ダゴン秘密教団日本支部(ひみつきようだんにほんしぶ)──略してDHKNS──は、今日も東京湾を眺める本拠ビルの一室で、クトゥルーさまの復活を目指して作戦会議を開いていた。
支部長の権田(ごんだ)は一つ咳払いをした後、渋いインスマス声を響かせて切り出した。
「ダゴン秘密教団ならではの商品を開発し、全世界に売りだそうと思う」
ざわめきの中、権田は続けた。
「現代の日本では何をするにも金がいる。『ネクロノミコン』や『水神クタアト』など、儀式に必要な魔導書を手に入れる為には何千万という金を積まなければならない。そのためには新しい収入源が必要なのだ」
血気盛んな団員が机を叩いて立ち上がった。
「殺して奪っちまえば良いんですよ!」
権田は悲しそうに鰓(えら)のついた首を振った。
「私たちは誇り高い深海の民だ。争いはできる限り控えたい」
「ですが人間ども、昔からわれわれを差別してばかりなんですよ! 水掻きがある、海臭い、カエルみたいなどと言いがかりをつけて!」
「……いや。だからといって報復は駄目だ。理想は、WINWIN──深海の民と陸の民の相互互恵だ」
「でも権田さま。実際にどうするのです?」
「私に策がある。日本の全年齢層に広がるオシャレブームに乗ろうと思う。われわれ深海の民にしか作れない商品を開発し、大ヒットを目指す。具体的には香水の販売を考えている」
「香水ですか……」
「ああ。素晴らしい香りがあるだろう。なのに陸の民が滅多に使わないあの香りが。そう──海と潮と魚の香りだ!」
その断言に歓声が上がった。
成功を確信した拍手が会場を満たした。
「「偉大なるクトゥルーさまのために!」」
一ヶ月後、DHKNS化粧品は莫大な赤字を抱えて倒産した。
【07】 負けるな! ダゴン秘密教団日本支部
「かわいいー」
店では女子高生たちがきゃいきゃい言いながら、『でぃーたん』を奪い合っていた。
「こんなのいたら飼ってみたいよお」
でぃーたんは、ダゴン秘密教団日本支部が、深海の民の社会的認知と資金獲得を目的として考案したキャラクターである。
とろんとした大きな目と、カエルのような魚のような不思議な格好のデザインが受けて、ぬいぐるみやキーホルダーなどさまざまなグッズに採用されていた。
「でぃーたんみたいなの本当にいたら、もう、あたし、どうしようー。おもいっきり抱きしめちゃうかもしれない」
でぃーたんのぬいぐるみをぎゅううっと抱きしめる女子高生を見て、偵察に来た二蛙(ふたり)の団員はなんだかドキドキしはじめた。今でこそクトゥルーさまに仕えるものたちだが、少し前まで彼らも若い人間の男性だったのだ。
二蛙(ふたり)の心に甘酸っぱい感覚が広がった。……もしかすると、もしかするかもしれない……。……もしかしないかもしれないけど、もしかするかもしれない……。
二蛙は何度も顔を見合わせた。
「……行ってみない?」「ホントですか?」「……おう」「でも、恥ずかしいですよ」「そんなこと言ったらいつになっても彼女できないって」「……解りました。でも先輩が先に行ってくださいよ」「それは駄目だよ。いくなら一緒で」「だったら、いっせーのでで行きましょうよ」「おっけー。嘘つくのはなしだからな」
ゆるむ頬を引き締め直し、とびっきりの笑顔をつくり、二蛙はいっせーのでで、でぃーたんに群がる女子高生の前に飛び出した。
「ねえねえ、きみたち。そのでぃーたんのぬいぐるみ、ぼくたちの組織が作ったんだよ」
女子高生たちの悲鳴が響いた。
銃弾で開いた穴に絆創膏を張りながら、二蛙(ふたり)は人類滅亡を誓いあい、泣いた。
■ イラスト
絵は海野なまこさん。
愛らしい団員たち中心に、春夏秋冬合わせて30以上のイラストが!
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