ヘボット!第35話「インスマ浜の呼び声」に登場するクトゥルフ神話ネタ全部解説

 

 日曜の朝アニメ「ヘボット!」第35話「インスマ浜の呼び声」にてラヴクラフトオマージュが登場しました。そこで発見したクトゥルー神話ネタを抜き出してみます。

 

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 なお、ヘボットの最新話はyoutubeのバンダイチャンネルにて、一週間無料視聴ができます。

 見逃した人は今のうちに!

 

 ヘボット!第35話 インスマ浜の呼び声

 

  

 では──!

 

 

 

 ヘボット第35話クトゥルフ神話ネタ全部抜き出し

 

「僕は春風ムラキ。職業は私立探偵。正義なき荒野を一人さすらう騎士団長だ」

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 春風ムラキはおそらく村上春樹のパロディキャラ。どうしてこのキャラをクトゥルフ神話ネタとして取り上げるのか……というのは、次のネタにつなげるため。

 直接的な関わりを述べるなら、村上春樹は『定本ラヴクラフト全集』の宣伝ビラにて推薦文を書いていたラヴクラフト好き。
 

 
 「キルボア・ハートフィールド卿、オカルト本とネジのコレクターとして有名なお方だ」

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 ギルモア・ハートフィールドはおそらく、村上春樹が作り出した「架空作家」デレク・ハートフィールドから採用された名前だと思われる。デレク・フィールドは、H・P・ラヴクラフト、あるいはロバート・E・ハワードが念頭におかれている……らしい……。(村上春樹は専門ではないので、より深く知りたい方は検索を)
 
 

「ご家族の話では、先月オークションで、ネジレノミコンという珍しい本を落札してから、様子がおかしくなったとか」「ネジノミクス?」「ネジるが景気を良くするヘボ?」「謎の作家ヘボクラフトが書いたと言われる謎の本だ!」

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 ネジレノミコンは当然、クトゥルフ神話によく登場するネクロノミコンのパロディ。

 ヘボクラフトは当然、ラヴクラフトのパロディ。

 

 
「ネジレノミコンには闇の神を蘇らせる秘法が書かれている」

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 この表紙は、『死霊のはらわた』に登場するネクロノミコンがベース。

 

 
 「闇の神はこの世をねじれにねじれさせ、苦痛と破滅とネジをもたらすとか」

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 ものの見事にクトゥルー様。

 

 

「闇を呼ぶヤミヤミネジ、1931年、ネジが島、インスマ浜にて発掘」

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 インスマスを覆う影が1931年に書かれたことからの採用か?
 

 

「フエールは路線バスでインスマ浜に向かい、それっきりなんだ」

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 『インスマスを覆う影』の導入がバスであることのオマージュ。
 
 
団宇市、赤牟、陰洲魔浜といったバスの表示

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 もちろん、クトゥルフ神話に登場する架空土地、ダンウィッチとアーカムのパロディ。

 ※日本のドラマ「蔭洲升を覆う影」では、壇宇市、赤牟、蔭洲升の字が使われた。小説版「蔭洲升を覆う影」は、小中千昭『深淵を歩くもの』に収録されている。(いつの間にか凄いプレミアついてるけど……) 

深淵を歩くもの (徳間デュアル文庫)

深淵を歩くもの (徳間デュアル文庫)

  • 作者: 小中千昭,伊藤郁子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2001/04
  • メディア: 単行本
 

  

 
サカナくんっぽいバスの運転手がつぶやいている言葉が「ダゴン、ダゴン」

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 ダゴンはクトゥルフ神話における水の神。深きものたちに崇拝されている。『インスマスを覆う影』に登場する教団の名前がダゴン秘密教団。

 余談だが、ダゴン秘密教団という言葉は若干誤解を生んでいる。ダゴン秘密教団は、別に秘密の存在ではない。堂々と看板を出している。元の意味を汲んで名付け直すなら「ダゴンという名前の秘奥を伝える団体」であるため、ダゴン秘儀教団とか、ダゴン密教とかの方が良さそう。(なお、ダゴン秘儀教団は『終末少女幻想アリスマチック』に登場する言葉。クトゥルフ神話要素が満載の神話ファンに超オススメのゲームだが、男性向け18禁ゲームなので注意。次のリンク先は「大人向け作品だけを集めた別館」での紹介記事)

 

 

 
 
「インスマ浜、かつて栄えた港町」

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バスから見える浜辺にて、火の周りで「ダゴン、ダゴン、ダゴン、ダゴン」と言いながら、踊っているサカナ頭の住人たち。

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海のお宿 偽浪漫亭(ぎろまんてい)

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 「インスマスを覆う影」で主人公が宿泊し、主な舞台となったのが「ギルマンハウス」。そのパロディ。
 

 
「H・P・ヘボクラフト、ネジ暦1937年没、百年近く前に亡くなったホラー作家の本に、いったいどんな秘密が?」

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 ク・リトルリトルリトルリトル……というのは、「Cthulhuを日本語でどう読むか問題」のとき、「クトゥルー」や「クトゥルフ」という代表的なものに混ざって、「ク・リトル・リトル」というのがあるのをネタにしたと思われる。どうして「ク・リトル・リトル」という言葉が出てきたかについて調べてみると面白いかも。 
 

 
 「プロトタイプヤミヤミネジ、は闇に仕える闇の神官、ヤミヤミソトホートが生み出す闇のネジ。使えば全てを闇の底へ引きずり込むであろう」 

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 ヤミヤミソトホートはヨグ・ソトホート(ヨグ・ソトース、Yog=Sothoth)のパロディ。アザトホート(アザトース、Azathoth)かもしれないけれど。

 
 
 「クトゥルー……ゲロゲロ?」「のんのん! クトゥルエロゲブルル 人間の口では発音できない名前よ」

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 「Cthulhu」という言葉本来人間には発音できない、というネタ。
 人間には発音できない言葉の中に組み込むことで、こっそりクトゥルエロゲって言葉を地上波に乗せたかった……?
 
 
 
「闇に取り憑かれたものは、闇の神の復活を願った。テケリ・リ! テケリ・リ!」

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 テケリ・リは、『狂気の山脈にて』で登場するショゴスの鳴き声。(ただし、初出はエドガー・アラン・ポー著の『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』。「南極の謎の生物の鳴き声」をラヴクラフトが自作のネタに組み込んだ。ちなみに、「ハスター」もラヴクラフト以前の他の作家が生み出していた。それをラヴクラフトが自作のネタに組み込んだ。ダーレスが「ハスター神話」を神話全体の名称として提案したのは、ラヴクラフト以前からあった用語のつながりを説明できる中心的な言葉であると同時に、先人作家たちに敬意を表する意味を込めた結果なのかもしれない)
 たぶん、この顔、栞と紙魚子に登場するクトゥルーちゃんを意識してる作画。
 
 
 
「我こそは闇の神官、ヤミヤミソトホートでアンコク」

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「待ち続けて数億年、今こそ古のもの、外なる神、復活でアンコク!

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 「古(いにしえ)のもの」は、日本のクトゥルフ神話界隈では、固有種族である「Elder Thing」の訳語だが、ヘボットでは普通に「古くからの存在」という意味で使われている。

 
 
「結局こうなんのか! コズミック・ホラーになってねえ! ダメダメだ!」

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 まとめ

 

 久しぶりに神話ネタ全部解説をしましたが、いやー、楽しいですね!

 一年に何度かでも良いから、色々なアニメでクトゥルフ神話回を出てくれればいいのに……と思ってしまいます。

 

 

 パロディアニメのクトゥルフ回だけあって、クトゥルフ神話関連ワードやパロディがすごくたくさんありました。

 ヘボット自体は初めて見たのですが、いつテレビを付けても一瞬で気を引けるようにと考えてか、色々なパロディを乱打しているのは良いですねー。